思いつくままに

思いつくままに書きつらねていたり、自作のss(小説)を上げていたりします。

自作SS(小説)

*抱きしめる※

彼は時々、何の前触れもなくギュッと私のことを抱きしめてくることがある。寄りかかるように、支えが欲しいかのように、無言で。 だから私も抱きしめる。彼と同じく黙ったまま、静かに。普段はハリネズミのように近寄りがたいのにその時だけは無防備な幼子み…

気持ちいいところ

「あなたの気持ちいいところってどこ?」 突然、彼女はそう訊いてきた。休日の午後、何の変哲もない昼下がりのことである。あえて言うならば、昼食後片付けも終え、まったりとしていた。 一瞬彼女の手を下半身へ導き僕自身を握らせようかと思ったが、ドン引…

*彼の好み

彼には食べ物の好き嫌いがない。ゲテモノは置いといて一般的なものはなんでも食べるし、何が出ても嫌な顔をしたりすることはない。 しかしそんな彼にも好みはあるのだ。 ケーキとかスイーツは買ったりカフェで頼んだりすれば私と一緒に食べるが、そういった…

僕を待つ灯火

十三歳の時、両親を交通事故で亡くして以来、僕はずっと祖母と暮らしていた。しかしそんな祖母も僕が十七歳の時、亡くなった。祖父は遙か前にすでに他界しており、僕はその時以降、ずっと一人だった。 だから帰る時、家に明かりが灯っているなんてことはもう…

*お会計

近所のコンビニへ彼と夜食を買いに出掛けた。 今は八月。夏真っ只中で夜になっても暑さは収まらず、二人してアイスをカゴに突っ込んだ。そして他にも夏季限定のお菓子が置いてあったためそれらもカゴへ入れた後、レジにて会計を済ますため、私はバッグから財…

*彼の苦手なもの

目の前にいるヤギと対峙して彼は固まっていた。 「おなか、空いているみたいね。買ったエサ、あげるとどんどん食べてくれるわ。可愛い」 私は一センチくらいしかない筒型の固形のエサを複数手の平に乗せ、ヤギの口元に近づけていた。ヤギはガツガツとあっと…

君の髪

彼女の髪は腰まで届くぐらい長く、ふんわりとゆるくウェーブがかかっていた。お風呂上がり等で髪が濡れている時だけはストレートになるが、それ以外は常時その髪は柔らかく波打っていた。 「これは天然パーマなの。だからみんなのようなストレートな髪は憧れ…

おでこコツン

その日は朝から怠かった。 寝不足で思考がはっきりせず頭が重い感じが午後になってもしていて、彼女の話もまともに聞けず反応も鈍くなってしまっていた。それ程ぼーっとしてしまっていた。 午後、彼女は友人達と買い物やお茶をしに出掛け、このままではいけ…

重ねた手と手

「あなたの方が大きい」 真面目な面持ちで彼女はそう言った。 「男の僕の方が大きいのは当然じゃないかな」 僕らは今、手首の位置を合わせ、お互いの手の平を重ね合わせていた。 「むぅ、それはそうなのだけれども……。でもこうして見るとやっぱり大きいなっ…

*ほっぺぷにぷに

「ねえねえ」 私は彼の肩を叩く。 「何だ……」 振り返ろうとした彼の頬に刺さるよう、肩に置いた手の人差し指を彼の方へ向ける。 「……」 私の指で彼の頬がぷにっとなる。頬を押されたままいつにも増して仏頂面になる彼。 「……」 驚いたり慌てたり叱られたり何…

*寝顔にキス※

目が覚めた。意識するまでもなく開けた視界に真っ先に飛び込んできたのは彼の寝顔だった。 薄暗さの中見える端正な顔は目を閉じたままで、ゆっくりとした寝息がわずかに聞こえてきた。 安らかな顔。 無防備ともいえるその表情に私は思った。 彼より早く目覚…

新しいもの

「わあ、安納芋まんだって。買っていかない?」 コンビニエンスストアのレジ前にあるカウンターフーズを見た彼女は目を輝かせながらそう言った。 「君って新商品とか期間限定品とか、そういうの好きだよね。目がないというか」 彼女はカフェとかで新作の飲み…