思いつくままに

思いつくままに書きつらねていたり、自作のss(小説)を上げていたりします。

新しいもの

「わあ、安納芋まんだって。買っていかない?」

 コンビニエンスストアのレジ前にあるカウンターフーズを見た彼女は目を輝かせながらそう言った。

「君って新商品とか期間限定品とか、そういうの好きだよね。目がないというか」

 彼女はカフェとかで新作の飲み物やフードメニューがあれば必ずそれを頼み、この前は今と同じ安納芋のアイスを買って来たり、中華まんの話をするならば別にファンでもないキャラ物のも新商品として売り出されていれば食した。食べ物だけでなく他のものに対してもそうで、ジェルボール洗剤が出た時なんかは見つけた瞬間、何これ? どんな感じなんだろう? と興味津々に手に取りカゴの中に突っ込んできた。

「新しいものってなんだかワクワクするじゃない。食べ物だったらどんな味かわからないし。期間限定品もその時じゃないと買えないから、なくなる前に買っておかないとって思っちゃうのよ」

「けど新しいものってつまりは初めてのものってことだからその分失敗だったってなることもあると思うんだけど」

「それも含めて楽しむのよ。おいしかったらまた買おう! ってなるし、おいしくなかったら、これは自分の好みと合わないからもう買わない方がいいなって学べるし。失敗は成功の元。後世の知恵の一つとなるのです」

 彼女はそう言って笑う。そのポジティブさは僕にはないもので、相変わらず眩しい。

「後世の知恵にはならないと思うけど……」

「わ、私の知恵にはなるの!」

 突っ込む僕に動揺しながらも彼女は強く主張した。

 

 

 

 

 

「おいしい?」

 家に着き二人で買ってきた安納芋まんを食べていると、彼女は僕に訊いてきた。

「君はどう思うんだい?」

「おいしいわ!」

 彼女ははっきりと満足そうな笑みを浮かべながらそう断言した。

「それはよかったね」

「それであなたは?」

「……おいしかったけど?」

「じゃあまた買いましょう」

「もし僕がまずいって言ってたらどうしたんだい?」

「そしたら次からは私だけ買って、あなたのは別のを選ぶようにします。……でもあなたは芋系は好きだからそんなことは言わないでしょう?」

「僕に食べ物の好き嫌いは特にないけど」

「けど好きな物とそこまで好きじゃない物はあるでしょう?」 

「それはまあ、そうだけど……」

 だが具体的にあれが好きだとかこれがあんまりだとかを言った覚えはない。

「あなたと何年もお付き合いしているんだもの。今まであなたと色々なところに行ったり、物を食べたり買ったりしてきたから、あなたの好みはなんとなくわかるわ」

 どうしてそんなことがわかるのか? 声にしなくともそんな疑問が表情に出ていたらしい。彼女はそう答えた。

「ふーん」

 彼女はのんびりとしているようで意外とよく相手のことを観察している。僕のことをよく見てくれているとでもいうべきか。

 なぜか気恥ずかしくなって、僕はにこにこ笑っている彼女から視線を逸らした。

 

 

 

 

 

 

END.

 

 

 

これから突発的に500〜2000字くらいの短編をポメラで書いたら、まずブログに上げていくようにしたいと思います。

 

そして後々なろうとカクヨムに「彼らの日常風景」という短編集に追加していければなと思います。(現在カクヨムのみ。ただし一遍を除き、なろうには単体の短編として掲載済み。近々カクヨムと同じようにまとめるつもり)