思いつくままに

思いつくままに書きつらねていたり、自作のss(小説)を上げていたりします。

気持ちいいところ

「あなたの気持ちいいところってどこ?」

 突然、彼女はそう訊いてきた。休日の午後、何の変哲もない昼下がりのことである。あえて言うならば、昼食後片付けも終え、まったりとしていた。

 一瞬彼女の手を下半身へ導き僕自身を握らせようかと思ったが、ドン引きされるかもしれないからやめておいた。元々純粋で性的な話題に赤面するような彼女にはそういった冗談は通じない可能性の方が高い。

「君の気持ちいいところはどこなんだい?」

 彼女のことだから、どうせ性的な意味ではないだろうなと思ったが、どういったニュアンスで訊いているのか確認したかった。

「私はね。あなたにここ、触られると気持ちいいの」

 彼女が手で示したのは当然ながらいやらしいところではなく……。

「髪、触りたかったのかい?」

「うん。……まあ、そういうことよ」

 彼女は僕の頭をーーというよりも髪を撫で回しながらそう言った。

「あなたの髪ってサラサラ。梳いても引っかからない。羨ましいわ」

 彼女はそう言いながら僕の髪を梳いたりもする。「そうかな。短いし、別に普通だよ」

 愛しい彼女に触られるの別に嫌じゃなかったし、そのままされるがままにしながら僕は答える。

「私は髪の毛くるくるしちゃってるから、上手く梳けたりしないわ」

 彼女の腰まで届くであろう髪はゆるくウェーブがかかっている。天然パーマなのだ。

「でも君のその髪、僕は良いと思うよ。ふわふわしていて」

 僕は彼女の髪を掬ってみる。そして髪に触れたまま手を移動させ、彼女のように頭を撫でてみた。

「気持ちいい?」

「髪、ぐしゃぐしゃになっちゃう」

「気持ちいい? ここ触られるのが良いんだったよね」

「それは……、そう……ね」

 彼女は頬を赤く染めながらも手を払うことはせず、僕に撫でられていた。逆に僕の頭に置かれていた彼女の手は止まっていた。

 目を伏せ固まる彼女。僕はそんな彼女の顔に手を滑らせ顎を持ち上げる。熱っぽくうるんだ瞳と目が合った。

 その目を見ていたらなんだかたまらなくなり、僕は自身の顔を近づけ、熱を持ちあだっぽくなった唇にキスした。そして顔を離せば、驚いたように目を大きく見開いた、けれどふにゃっととろけたような表情をした彼女と視線が合う。その唇はまだ満たされていないかのように、少し突き出されていた。

 僕らは今度はお互いの背に腕を回し、また口づけ合った。

 

 

 

 

 

 

 

 END.